原稿執筆をめぐるタイムラグ問題

ある本の序章を担当していて、この2~3日、その第4稿を書いていた。第4稿というのは、つまり、いったん編集者にわたってから、4回目の修正ということである。昨年9月に第1稿、今年4月に第2稿、今月(7月)初旬に第3稿、そして今日出したのが、第4稿だった。


多くの執筆者がそうだと思うが、実のところ、最も気合いを入れて原稿を書くのは、第1稿の段階である。


第1稿を書いて、編集者からすぐコメントだとか修正要求だとかが来ることはまずない。もしすぐ来れば、第1稿を書いた記憶だとか集中力だとかがまだ残っていて、編集者からのコメントに熱意をもって返すことができるだろう。しかし、そんなことはまずない。たいていの場合、編集者からの修正要求は、「忘れたころにやってくる」。逆に、編集者側は、こちらが「忘れたころ」であるそのときに、いちばん集中している。


ここで負けてはいけない。こちらも無理矢理にでも、集中力を再び高める必要がある。しかし、そうできない場合もある。「もう前に書いたことだから」となんとなく乗れないこともあるし、突然やってきたそのときに時間調整がうまくいかず、集中する時間がとれないこともある。その結果、修正がおざなりになってしまったりすることもある。


こうしたことは、執筆者と編集者の間だけでなく、執筆者と編者、あるいは共著ならば執筆者同士でも生じやすい。こうした集中力のタイムラグ問題、なかなか妙案はない。