「協定」という新しい道? 協働のしくみづくり

先日(9/8)、かながわNPO研究会の学習会「NPOと行政の契約のあり方を考える~『協定』の事例から」に参加した。


通常、行政とNPOが協働しようという場合、まったくのボランタリーベースでの協働か、行政からNPOへの事業委託という形がほとんどであった。しかし、「事業委託」というのは、本来行政がやる事業をNPOに「委託」するわけで、あくまでその主導権は行政に残ってしまう。


たとえばある分野の事例調査研究を行政から事業受託しても、その報告書を書くときには、行政のチェックが入る。NPO側はもちろん抵抗するが、最後は「甲乙契約なのですから」ということで、押し切られる。


そんな関係は本当の「協働」ではないだろう、というわけで、新しい形が模索される。たとえば、事業委託ではなくて、NPOの活動への助成という形なら、上のようなことは生じない。しかし、多くの自治体の場合、NPO活動への助成という形では、予算規模におのずと限度がある。


そこで注目されるのが「協定」という形である。NPOと行政が対等な形で「協定(書)」を取り結ぶ、というわけである。イギリスのコンパクト(政府とボランタリーセクターとの間の約束)が、日本のNPO関係者によく知られるようになったことも、こうした関心の背景にある。


勉強会では、実際に「協定」を取り結んだ2つの事例について、当事者たちからの報告があった。横浜市市民活動共同オフィスにおける横浜市とNPOとの間の「協定」についてNPO法人市民セクターよこはまの泉一弘さん、かながわボランタリー活動推進基金21協働事業負担金と負担金交付団体の「協定」についてNPO法人ソフトエネルギープロジェクトの佐藤一子さんさんから報告があり、そのあと、地方自治総合研究所の菅原敏夫さんから、最近の指定管理者制度における「協定書」のありようなど、全体的な話があった。


どれも要点をついた報告で、勉強になった。横浜市の事例も、神奈川県の事例も、協定書とは別個に契約書を結んでいる。市民セクターよこはまの泉一弘さんは、甲乙の契約書はあるが、協定書の方が上位にある、と語った。そこが大事な点だろう。


行政のお金を使いながら、市民と行政が対等な形で協働を行う、あるいは市民が主導で協働を行う、というしくみは、「協定」によって、少しほのかな形が見えてきた。しかし、勉強会でも議論になったように、協定書と契約書との関係はなかなか難しいし、成果の帰属という問題も一筋縄ではいかない。要は、既存の行政システムの枠内で本当の「協働」を行うのは難しい、ということか。「協定」を一つの戦略的なしかけとして、経験と議論を積み重ね、みんなが納得できる協働のあり方を模索するしかないだろう。