あやしい外郭団体

職場で、『ライフマップ』という冊子が配られた。「教職員の生涯生活設計ガイドブック」という副題が付いている。老後を射程に入れて、生活設計をちゃんとしなさい、という大きなお世話の冊子である。しかし、役に立つ情報もあるかもしれない、と思い、ぱらぱらとめくってみた。「余暇をどう過ごすか」「子どもとどう接するか」「地域の社会活動にどう参加するか」「健康にどう気をつけるか」「老後の生活をどう設計するか」といった項目がずらずら並ぶ。中を見てみると、やはり、くどくどと、しかし、通り一遍なことが並んでいる。たとえば、「ボランティア活動」の項目では、「新たな自分発見のためにボランティアがおすすめです、とあり、たとえば、地域の身近な活動については市町村や社会福祉協議会から情報を得てください、公民館・図書館でも活動がありますから、問い合わせてみてください、自然観察の活動については日本自然保護協会の「自然観察指導員」の活動などがありますよ、と来ている。(目次は、http://www.kyosyokuinzaidan.jp/jigyo/j04guide02.htmlにあります)


日本国家が、今どういう「標準的な日本人」を育てようとしているのか、がここにある。実態と幻想とをないまぜにした「標準的な国民」。


この冊子、いったいどこが作ってなぜ配られたのか。作ったのは「財団法人教職員生涯福祉財団」(http://www.kyosyokuinzaidan.jp/)。いかにもあやしげで、天下りのにおいがぷんぷんする。ネットで軽く調べてみると、やはり会長は元文部省初等中等教育局長の古村澄一氏、理事長は元文部科学省事務次官の國分正明氏(会長と理事長の両方いるのもなぜだ?)。ホームページによると、設立目的は、


当財団は、生涯生活設計のための情報提供、ボランティア活動をはじめとする地域社会活動参加のための情報提供、安定した経済生活実現のための支援事業などを通じて、教職員等の人生をより充実したものとすることを目的として、平成4年6月に設立されました。

 今後も、これからの社会のさまざまな変化に対応すべく、関係諸団体との連携をより密にし、各事業を推進してまいります。


という、なんだかよくわからないもの。


ついでにこの団体の財務も見てみた。予算額5億3400万円、と結構大きい。2005年度の収入5億3400万円で、そのうち、「出版物頒布収入」が1億2700万、「保険手数料」が2億1200万、「雑収入」が1億3100万。


「出版物頒布収入」って何だ? 要は、この『ライフマップ』などを売っているということだろう。僕の手元に来たこの冊子(A4版124頁。オールカラー)も、ただでくれたわけではなさそうだ(ホームページに記載された1冊の価格は900円)。つまりは、職場の共済組合(文部科学省共済組合)が一括購入した、ということだろう。この財団の「会員」は、文部科学省共済組合を筆頭に、公立学校共済組合、全国町村教育長会、全国高等学校長協会、日本教職員組合など、教育団体がずらずら並ぶ(日教組も入っているんだ)。


さきほどの「出版物頒布収入」1億2700万をざっと900円で割ってみると、約14万。「出版物頒布収入」のすべてがこの『ライフマップ』ではないだろうが、まあこんな感じのものを14万冊くらい殿様商売で売っているということだ。そしてその中身はといえば、多くの人が独自に情報収集しているであろう、あるいは、それ以下の内容。


こんな外郭団体、要るの?