『聞き書き 北上川河口地域の人と暮らし』刊行 

宮城県・北上川河口地域(旧北上町。現石巻市北上町)の調査も4年が経つ。年2回ずつ通い、多くの人に話を聞いた。大学院生たちとの共同調査。この8月に調査したのを含め、聞き取りは、合計37名、延べ80回に達した。


調査の結果を地元の人にも読んでもらいたいと、聞き書きの冊子を作ることにしたのが2年前。結局2年かかって100ページあまりの冊子を作った。6人の方の聞き書きに、時代的な背景を説明する5つのコラムを付けた。


聞き書きの話し手は、いずれも3回以上話を聞いた人たちばかりで、それを再構成して、僕らが重要だと考える地域のトピックをうまく織り込むように編集。脚注も付け、中学生程度でも読んでもらえるよう工夫した。中身は全部DTP(InDesign)で作成(院生の平川全機君がそれを担ってくれた)。


この8月の調査の際に、地元のみなさんに配布。教育委員会のご尽力で、石巻市全域の学校や社会教育関係の各部署・関係者に配布していただけることにもなった。


僕らのこの試みには先達があった。茨城県土浦市宍塚で里山保全の活動をしているNPO法人 宍塚の自然と歴史の会が作った『聞き書き 里山の暮らし 土浦市宍塚』(正・続の2冊ある)。この『聞き書き 里山の暮らし』はたいへんよくできた本で、聞き書きや写真、地図、それに詳細な脚注が、この宍塚の暮らしや歴史をよく描いている。


僕らの試みは、宍塚の試みに比較すれば少々見劣りするものだが、それでも、この北上川河口地域の人と自然の関係について、これまで活字化されなかった多くのことを描けたのではないかと思っている。


自然環境とこれからどうつきあっていくかを僕らが考えるとき、それぞれの地域での歴史を抜きに考えることはできない。そのための基礎材料として、こうした調査がある、と僕らは考えている。


(『聞き書き 北上川河口地域の人と暮らし』は無償で配布しています。手に入れたい方は、宮内までご連絡ください。また北海道大学HUSCAPでもPDFで配布しております→HUSCAP『聞き書き 北上川河口地域の人と暮らし』