【23】プランテーション計画をめぐって

三月、一年ぶりのソロモン諸島に出かけた。通い始めて十数年経つ。何というか、親戚のおじさんがときどき訪れるといった状態。亡くなった知り合いも多く、当時の子供たちは立派な大人になった。その間、政治的にはいろいろあり、民族紛争もあったが、村の生活はほとんど何も変わらない。


今回は、その村の生活を大きく変えるかもしれない(いや、やはりほとんど変えないかもしれない)プロジェクトについての調査に向かった。アブラヤシ・プランテーションのプロジェクト。僕の調査地であるマライタ島の一角に、一万ヘクタールの広大なアブラヤシ・プランテーションが政府のイニシアティブで作られようとしている。僕がいつも通っている村から、車で二時間くらいのところだが、村にも、利害関係者がたくさんいる。


この手の計画は、前からソロモン諸島では浮かんでは消えしているから、僕も当初軽く見ていたのだが、昨年あたりから、どうもこのプランテーション計画がめずらしく〝順調に〟進んでいるらしいことがわかった。


見るところ、政府は地元住民に相当気を遣い、彼ら自身が言うとおり、「ボトムアップ」で計画を進めようとしている。それがたとえ、環境破壊と悪名高いアブラヤシ・プランテーションであっても、そのこと自体は評価できる。住民たちも、これまで開発問題がらみではいつも土地争いを繰り広げてきたのに、今回は争いごとも少なくわりあいスムーズに進んでいる。僕の見るところ、それにはいくつかの原因がある。民族紛争以降、争いに飽きてきた住民たちの厭戦気分みたいなものがそこにはあるように思えたし、また、このプランテーション計画に乗り遅れまいとする感覚も大きく働いているように見えた。


しかし、今回調査してみて、プランテーション計画にはいろいろな意見があることがわかった。当たり前のことだが、やはり環境について懸念する声も少なくなく(もちろんこの場合の「環境」は、彼らが畑を拓いたり、林産物を採集したりするものとしての環境だ)、少なくない親族グループ(土地に対する所有権をもっている)が、様子見の状態にある。先走った親族グループ、慎重な姿勢の親族グループ、計画に大きな期待を寄せる住民、懸念する住民、いろいろな幅がある。


もちろん決めるのは彼らだから、僕がこの問題についてどうこう言うつもりはない。というよりも、僕自身、こういう流れについて、明確に賛成か反対かということがはっきり言えなくなっている。それだけ地域社会の中に入ってしまったということかもしれないし、いや、単に歳をとったということかもしれない。それでもとりあえずウォッチングだけは続けよう。