【33】山村の「大試食会」

二月一一日、日高町千栄(ちさか)地区というところで、「大試食会」なるものが催されて、僕も学生たちと一緒に参加した。地域の人たちが思い思いに作ってきた食べ物をみんなで食べるという会だ。白花豆の煮豆、山菜スドキのめんみ漬け、鹿肉のみそ漬け、フキノトウ入り練り味噌、ギョウジャニンニクの酢みそ和え、ヤマベの甘露煮、大根の漬け物、紫いもパン(紫イモと小麦粉「春よ恋」で作った)、かぼちゃの茶巾しぼり、ハスカップゼリー、などなど、全部で五九種類の料理が並んだ。ほとんどがこの千栄地区でとれた食材を料理したものだ。とても全部は食べきれなかったが(ああ、満腹)、地元食材のすばらしさに正直感嘆した。


日高町とおつきあいを始めて一年。学生たちと一緒に、まちづくりのお手伝いをしてきた。ワークショップを何回も開いて、地域の資源をみんなで掘り起こし、それをもとにモデルツアーを構想し(実際にモデルツアーもやってみた)、また、他地域の視察にも行き、さらには、地域の課題も浮かびあがらせた。


モデルツアーでは、星を見る、酪農体験、地域のご老人からお話しを聞く、といった地域資源を活かした企画が試みられた。


僕らがお手伝いできたことは少ないが、僕らが来ることで、もともと地域の人がもっているパワーを引き出した形になった。


「小学校が地域にあったころは小学校が地域の中心だった」と千栄地区の人たちは言う。その小学校は一九九八年に閉校になり、地域の人が集まることも少なくなった(ひとり老人クラブだけは元気だけれど)。ならばもう一回集まる場を設けようよ、と住民ネットワークとして「チロロ」という組織を立ち上げ、二人の若い女性が事務局を担当することになった。「チロロ」は、月一回「チロロ便り」を発行すると同時に、地域のイベントを積極的に企画した(「チロロ」は千栄地区のもともとの名前)。


小学校があったところには、現在、「北海道アウトドアアドベンチャー」というラフティングなどを行うアウトドア業者が入っている。そこの人たちもまたこのチロロを担っている。ここがこれからの千栄地区の核にならないか、と地域の人たちも期待している。古くからの人と新しい人が一緒に日高町を盛り立てようとしているのを見るのは、とてもうれしいことだ。


「大試食会」が催されたのはそんな流れの中にある。地域の人々がもう一度新しい形でつながり、さらには食べ物という地域の文化の根源をもう一度引き出すことが意図された。

3月には「認知症サポーター要請講座」が開かれる。これもチロロの話し合いの中で、こんなのが必要だよね、というところから講座が開かれることになった。つながりあえば、知恵が出る。知恵が出れば、行動にもつながる。