シアトル市民活動視察5日目

■Department of Neighborhood:コミュニティ活動の下支え


シアトル市のDepartment of Neighborhoodを訪れ、Project ManagerのLaurie AmesさんにおもにMatching Fundの運用についていろいろ聞いた。「多くの住民がMatching Fundにアプライするように促していますし、アプライのときにはいろいろサジェストします。他の部局との協力も重要です。いろいろな文化的背景の人が住民にいるので、なるべく多様な人びとにMatching Fundのことについて伝えようとしていますが、そこはなかなか難しいです。ただ、スタッフにはカンボジア語やベトナム語ができる者がいます」。


(参考)

(P-Patch ProgramのEvaluation→)http://www.seattle.gov/neighborhoods/ppatch/documents/PPatchEvaluation2009.pdf

(Matching FundのEvaluation→)http://www.seattle.gov/neighborhoods/documents/NMFEvaluationFINAL.pdf


■Artspace Hiawatha Lofts:芸術家たちの安宿


Downtownから少し南に車で走ったところに、Artspace Hiawatha Loftsというビルがある。お金のないアーティストたちに安く住居を提供している建物だ。61部屋ある。


そのうちの2つの部屋に入れてもらった。部屋というより、ビルの1室。やたら天井が高く、中は住居というより仕事部屋。彼らは仕事部屋と居住を一緒にしている。


訪れた男性の部屋の中は、がらくた的なさまざまな小物であふれていて、どこからが彼の作品でどこからがコレクションなのかよくわからない。彼はこのArtspace Hiawatha Loftsの中の風通しをよくしようとして「いつもドアを開けている。誰でも入れるように」と言う。


Resident ManagerのJenna Abtsさん(彼女自身アーティスト)。「希望者が多く、1~2年待たなければここには入れない状態です。入居に当たっては、私の他、何人かの住居人が面接をします」


→Artspace Hiawatha Lofts:http://www.artspace.org/properties/hiawatha/http://aptfinder.org/property627.html


■Jackson Place Co-housing:コハウジングの実践


Artspace Hiawatha Loftsから道を挟んだ反対側に、ところでJackson Place Co-housingがある。住人のKathy Sellarsさん。「法律的にはマンション(condominium)です。マンションの法律に則ってやっていますが、違うのは、徹底した合意形成のプロセスです。長い時間をかけて議論をして決めてきました。co-housingは農村部にはよくありますが、都市部のco-housingはここだけです」。


27軒のco-housingである。各unitおよびコモンスペースはつながっている。日本で言うとタウンハウスのような形。マンションと同じく各家族は各unitを所有していて、共有部分を共同所有している。各家の玄関が向き合う方になっていて、真ん中には美しい庭が広がっている。また小さな自然スペースも敷地内にあり、ツリーハウスもある。家の大きさは様々で、平均は3ベッドルームで1400スクエア・フィート(約140m2)。コモン・スペースとして、共同キッチン、ダイニング・ホール、共同ランドリー、倉庫、子供の遊び部屋、事務室、会議室がある。会議室には、子供たちのそれぞれの家族の成長の様子を示す集合写真が掲げられている。「週3回みんなで食事をしています。なるべく住人に多様性(diversity)が出るようにと思っているのですが、難しいです。私たちの多くは中程度の収入の家族です」。co-housingの思想に基づき、一緒に住む、コミュニティを形成するということを重視しているようだ。外の共同スペースも美しく、こんなところに住みたいと思わせるco-housingだった。


→Jackson Place Co-housing:http://www.seattlecohousing.org/、(The Seattle Timesの記事)http://community.seattletimes.nwsource.com/archive/?date=20011021&slug=homecohousing210


■The Duwamish Longhouse:先住民族


先住民族の話がなかなか出てこないなあ、と思っていたら、さすがBelizさんのアレンジしてくれた予定にはちゃんと入っていた。The Duwamish Longhouse(http://www.duwamishtribe.org/longhouse.html)は、Duwamish川の河口近くにある大きな木造の建物。杉で建築されたこの建物には、床に伝統的な模様が施されていたり、伝統的なカヌーが展示されてあったり。また、Duwamish tribeの歴史が描かれたパネルや伝統工芸(ガマを使って編んだものなど)も展示されている。Duwamishの人びとの活動拠点でもあり、教育(ちょうど午前中にはワシントン大学の大学院生たちが来ていたという)および商業的にもいろいろ使っている(結婚式の会場にも)らしい。


Duwamish tribeは、今のSeattleおよび周辺のエリアにいたこの地域の先住民族。The Duwamish Longhouseは、もともとDuwamish tribeのhah-AH-poosという村があったところに近く、また、このあたりで西洋人が最初に入ってきたところにも近い、という。そもそも「Seattle」の名前はDuwamish tribeのChief Seattle (Si’ahl)から来ている。


Duwamish tribeの歴史や現状について、まだ全部は飲み込めていないが、1855年米国政府との間にtreatyを結んだものの、それは入植者たちによってすぐに破られたということらしい。「土木工事が川や水に変化をもたらし、それがDuwamishの生活を苦境に追い込みました」。その後Duwamishの人びとははホップ農園で働いたりしていた。現在、「米国では先住民族の権利は1970年代に進展しまたが、それは先住民族として認められた民族のみで、認められていない民族は苦境に立たされています。クリントン政権のときに私たちも認められそうになったのですが、ブッシュ政権でひっくり返され、現在裁判で認めるよう係争中です」。


Duwamishを含むこの北西部(カナダ側も含む)の先住民族(共通する文化を持っているようだ)の間で、カヌー文化の復活の試みなどもあるという。売ってあった教育用の図書_The People of Cascadia_は、このあたりの先住民族の文化と歴史についてわかりやすくかつ詳しく描いている。


→Duwamish tribeのホームページ:http://www.duwamishtribe.org/(歴史や現状について詳しく書かれている)

→Lia Steakley Dicker, 2009, “The Tribe That Would Not Die”, Seattle Metropolitan (こちらも歴史や現状について詳しい)