小國和子・亀井伸孝・飯嶋秀治編『支援のフィールドワーク : 開発と福祉の現場から』 

『支援のフィールドワーク』という本がこの4月に刊行された。手に取るなり、とてもいい本ができたなあと思った。


筆者たちは、「支援」を斜に構えるでもなく、もちろん楽天的に構えるわけでも、深刻に構えるでもなく、自分たちの経験をしなやかに描いている。海外での開発援助、平和支援、日本での福祉の現場、とそれぞれの現場はバラバラで、しかし、つながっている。その現場から、他の現場も意識しつつ、ダイナミックなプロセスとしての「支援」、そして「フィールドワーク」が語られる。


どうも「支援」から新しい学問が生まれてきそうだ。(新しい学問を生むことが目的ではないが)


おもしろいことに、著者の多くは1970年前後の生まれ。僕より10歳くらい下の人たち。「支援」がすでにしくみとして成立し、また「大衆化」した世代の、やさしくかつラディカルなレポート。


清水展さんや中田豊一さんといった、おそらく著者たちが先達として仰ぐ人たちのコラムもよい。白石壮一郞さんによる巻末のブックガイドもたいへん有益。


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小國和子・亀井伸孝・飯嶋秀治編『支援のフィールドワーク : 開発と福祉の現場から』世界思想社、2011年。

[目次]

はじめに: 支援のある風景を描く……亀井伸孝・小國和子

1章 占領下のパレスチナとの出会い……清末愛砂

2章 日本の児童福祉施設で……飯嶋秀治

3章 精神障害をもつ人たちの隣へ……間宮郁子

4章 音声言語と手話のはざまで……亀井伸孝

5章 チリの開発プロジェクトでの偶然の出会い……内藤順子

6章 カンボジア農村でかかわりを模索する……小國和子

7章 震災後の神戸・長田に生まれた多文化センター……吉野太郎

8章 渋川のおばちゃんたちが挑む地域づくり……辰己佳寿子

9章 ブルキナファソ農村の女性グループとともに……浅野史代

10章 タンザニア農村の一時漂泊者……黒崎龍悟

ブックガイド: 支援のフィールドワークを深めたい人へ……白石壮一郎

おわりに: 支援からみえるフィールドワーク……小國和子・亀井伸孝

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