浦野正樹・大矢根淳・吉川忠寛編『復興コミュニティ論入門』

災害社会学の成果は気になりつつも、あまりちゃんと目を通してこなかった。


震災を受け、学部ゼミでは『阪神淡路大震災の社会学』(全3巻)を読んだ。避難所生活や復興をめぐる、具体的で課題発見的な論文群に刺激を受けた。フィールドワークを軸としながらミクロとマクロを往復しつつの議論、という社会学のよいところが生きた論考たち。


出張中に浦野正樹・大矢根淳・吉川忠寛編『復興コミュニティ論入門』(弘文堂)を読んだ。「シリーズ災害と社会(全8巻)」の第2巻。大矢根淳氏が「被災地におけるコミュニティの復興とは」という序論に当たる部分を書いていて、示唆に富む。復興計画が被災者抜きに議会等で決まってしまうと「被災者にとっては、懸命に復旧を模索しているところに、復興という第二の災いが襲いかかってきたかのように感じられる」。避難者が各地に分散しているところではとくにそうなりやすいという。したがって「復興の総論を被災者自らが紡ぎ出す状況の創設が重要となる」。


宮本匠氏のコラムによると、中越地震の復興過程では(悲観的な地域像からひとまず視線をそらす)「軸ずらし」と、(小さな取り組みを重ねる中で徐々に「どんな地域に復興したいか」という思いが語り直されるようになるという)「物語復興」が重要だった、と。これは私たちが環境ガバナンスにおいて議論していることと奇しくも同じ話で、少しびっくり。


また、この本で紹介されている、中越地震の復興にかかわる人たちが新潟県小国町法末集落に集まって議論したときに作られた「法末宣言」http://bit.ly/j3ihvJは示唆に富む。


「復興とは人々が元気・活力を取り戻すこと/復興とは過程であり時間がかかるが、目標の共有も大切/復興過程は、個人・地域の自己の再認識、多様性を認めあうことから始まる/復興支援とは、被災者に希望の火を灯し、それが大きくなるように支えること/復興の推進力は、地域の力と災害バネと台頭する人材である」


(ある種の社会科学的な発見をこういう短い言葉で表しておくことは大事ですね)


(日本災害復興学会「復興とは何かを考える委員会」のページには示唆に富む「復興とは何か」の議論がたくさん掲載されているにも気がついた。http://bit.ly/jxiB7k