【49】ドイツ:再生可能エネルギーと地域社会(その2)送電線を市民の手に

昨年九月のドイツ訪問のレポートのつづき。


ベルリンでとびきりおもしろいグループに出会った。協同組合「ベルリン市民エネルギー」(Bürger Energie Berlin)がそれ。事務所もおもしろいところにある。旧東ベルリン地区の元化学工場跡。現在、そこが集合住宅になっていて、社会的企業などさまざまな団体が集まっている。その一室が「ベルリン市民エネルギー」の事務所。


代表のペーター・マスロッホさんたちが私たちを歓迎してくれた。みんなボランティアだ。「「発電を市民が」から「送電を市民が」の段階に入っているのです。シェーナウ村(地域の送電網を大会社から買い取ったことで注目されているドイツ南部の村)がその先駆でした。二〇一一年一二月に設立した私たちの協同組合の目的は、ベルリンの配電網の営業許可を勝ち取ることです」。


ドイツでは、発送電分離が実現されているが、現在ベルリンの配電網を運営しているのはスウェーデンの大手電力会社。しかしその契約は二〇一四年に切れる。その先は営業権をめぐる入札によって決まる。


「入札は政治的に決まります。私たちの協同組合は現在次の契約を勝ち取るためにお金を集めているところです」。集めたお金は社会的企業への融資をする銀行として知られるGLS銀行の子会社GLS信託に預けている。契約を勝ち取るまではそれに手を付けず、もし勝ち取れなければそれらのお金は出資者に返還される。


ドイツでは、誰が送電線の営業権をもつかは、自治体が決める。そのため、マスロッホさんたちは、今後、州議会への働きかけなど、さまざまな政治的な動きをするつもりだ。


「私たちとしては、第一の目標は私たち自身が配電網を買い取ることです。次善の策としては、ベルリン州が買い取ることです。ベルリン州が買い取るための住民投票も考えています。ベルリン州が買い取る場合は、私たちとしてもその一部を出し、その経営に参加したいと考えています」


ベルリン市民エネルギーの目的は再生可能エネルギーそのものというより、経済の民主主義化だ。マスロッホさんは言う、「私たちの活動の目的は三つ。一つは経済を地域に戻すこと、二つ目は民主主義。だから私たちのグループは、出した金額にかかわらず一人一票が確保される協同組合という形を選びました。二〇一三年は総選挙がありますので、送電線の民主主義化について争点にしたいとも考えています。私たちの試みがもし失敗しても、これはパイオニアとして他地域に波及するはずです」。


本気である。