山田太一「早春スケッチブック」

山田太一の久々の連続ドラマ「ありふれた奇跡」が3月で終わり、今しばらく山田太一的世界に浸っていたいと思った。3月からは少し間が空いたが、「早春スケッチブック」をレンタルビデオ屋で借りた。


山田太一の傑作と言われているこのドラマを、僕はまだ見ていなかった。1983年の作品だから、僕は大学生だったのだが、「ふぞろいの林檎たち」を熱心に見ていても、「早春スケッチブック」は当時存在すら知らなかった。平均視聴率は7.9%(Wikipediaによる)とふるわなかったようなので、僕が知らなかったのも当然なのかもしれない。


そんな「早春スケッチブック」が再評価されたのがいつなのかわからないが、いつの間にか山田太一の傑作と言われるようになり、2005年にはようやくDVDで発売された。


家族みんなで見た。山田太一的世界満載で、山田太一信奉者としては大満足。岩下志麻、山崎努らの演技もすばらしかった。


山田太一が描こうとする「家族」。つまりは現代において私たちはどこに大切な人間関係を再構築しうるかという問題。理屈と感情。個人における静と動。問題の立て方と解決の方向。山田太一のドラマは僕の血肉になっている。


それにしても、山田太一の世界にどうして自分がこんなに惹かれるのかよくわからない。どうやら、僕が小説やドラマに求めているのは、中身よりもテイストらしい。ドラマだったら台詞まわし、小説だったら文体や構成。


老後は山田太一の過去のドラマを見ながら暮らしたいなあ。