[私家版] 市民のための情報収集法

ver.1.5 (2002.11) 

宮内 泰介

 

□なぜ“情報収集法”なのか?

 誰でも情報を必要としている。レポートを書かなければならない学生だけでなく、論文を書かなければならない研究者だけでなく、記事を書いている新聞記者だけでなく、プレゼンの準備をしているビジネスマンだけでなく、プロジェクトを策定している行政マンだけでなく、誰もが情報を必要としている。しかもできるだけ正確な情報を必要としている。

 町にゴミ処理場建設問題が浮上した、どうすればいいのか、他の地域ではどうなっているのか? 自分の海外体験を人前で話すことになった、どうせ話すなら正確な情報を伝えたい、さてそれはどこで調べればいいのか?

 情報は必要とされている。しかし、情報は必ずしも誰にでも開かれているわけではない。行政、企業、大学、といったところが、制度や金銭の面で、情報の囲い込みを行っている。たとえば非常に重要な情報の載っている各種業界紙(たとえば『日本木材新聞』とか『日本外食新聞』とか『マリンフーズニュース』とかいったもの)は、一般の目に触れることはまずないし、もし購読しようと思うと、べらぼうに高い。あるいは、国立情報学研究所(旧学術情報センター)が蓄積している論文や研究者のデータベースは、一部の例外を除いて、大学等の研究者しかアクセスできない。新聞社や記者クラブには厖大な情報が入ってくるのに、それは現状では新聞社に(あまり使われずもせず)蓄積されているだけだ(記者クラブに垂れ流される情報を適当に加工しただけの記事が多いのに、「著作権がある」と新聞社が力説するのはいくらか滑稽だ。新聞社の図書館というのがあってもいいのにないのはどうしてだろう?)。

 しかし、そうは言っても、まったく手に届かないと言うことはない。情報は案外ころがっているものだ。ころがっているのを、拾い集めるには、いくらかコツがある。インターネットは、そのコツの選択肢を増やしてくれた。そのコツを考えてみるのが、このページである。 
  
 
□文献情報の集め方

■本、雑誌記事、学術論文

 今日インターネットを始めとする電子情報が有力な情報源になっているといっても、紙に印刷されたものの量に比べればまだまだ少ないだろう。とくに過去の蓄積は圧倒的に印刷媒体のほうがすぐれている。

 印刷媒体というとすぐ「本」を思い浮かべる人が多いと思う。実際世界中の「本」に含まれている情報量は相当なものだ。しかし、情報というのは本来こま切れなものだ。それに対して、「本」という媒体は、(百科事典を除いて)一般に最初から最後までを通して読むということを目的に編まれている。そこにこそ本の真骨頂があるのだが、自分が欲しい情報を集めるという目的にとって、この編まれ方はあまり有益なものではない。「読む」ことを主眼に置いているため、「調べる」にはちょっと使いにくいのだ。そのために「索引」というものがついているのだが、この「索引」、欧米の(ちょっとアカデミックな)本では一般的なのに、なぜか日本の本ではないがしろにされている。最近ではワープロでも自動的に索引を作ってくれるものがあるが、索引を作るというのは、ちょっと職人芸的なところがあって、お金もかかる。出版社が躊躇するのもわからないではない。(しかし、ちゃんと索引を作ってほしい)

 雑誌記事・学術論文は、その点、一点あたりの枚数が短く、焦点も定められている。本で探し出すより効率のいいことが多い。情報を収集するにはまずこちらから注目することにしよう。

 雑誌記事や学術論文を探し出すというのは、一般の人にとってちょっと馴染みのないものかもしれない。図書館に行っても、たいてい、本は開架になっているが、雑誌は(最新のものを除いて)書庫に入っている。書庫に入っている雑誌を借り出すということをしたことがない人も多いかもしれない。ここにも、日本の学校教育が情報リテラシー教育を無視してきたことが表れている。

■冊子体『雑誌記事索引』とそのCD-ROM版

 しかし、臆することはない。雑誌記事や学術論文を探し出すことは、それほど難しいことではない(それほど簡単でもないが)。

 いくつかの方法がある。 
 雑誌記事・学術論文は、大きく分けて2つある。ひとつは、アカミックな論文で、もうひとつは、『週刊朝日』、『文藝春秋』といった普通に本屋に売られている雑誌、あるいは、一般には売られていないPR雑誌、業界雑誌などに載った文章である。もちろん両者ははっきりわかれるものではなく、両者の中間に属するものも多い(これはとくに日本で顕著)。

 前者のアカデミックな雑誌については、『雑誌記事索引』という冊子がかなりの部分を網羅している。「雑誌記事索引」という名前だが、一般にいう雑誌記事ではなく、主に学術論文が載っている(ややこしいがそういうことだ。一部『エコノミスト』や『世界』などの一般雑誌の論文も含まれている)。この『雑誌記事索引』は、1年に4回発行され、各巻は、「産業」、「社会・労働」、「哲学・心理学・宗教」といった分野別に、その3カ月の間に発行された学術論文が網羅的に掲載されている。この、乳白色の表紙の『雑誌記事索引』は、大学図書館や県立図書館レベルなら必ずある。なければその図書館の程度の低さを呪ってもいい。(ただし、実はこの『雑誌記事索引』、すでに刊行が停止している。このあとで述べるCD-ROMおよびオンラインに移行した、と考えていいだろう)

 しかし、この『雑誌記事索引』、あまり使い勝手がいいとは思えない。なにより、3カ月ごとに区切られているのが使いにくい。いっそ、項目別に1年ごとになっていたほうがいいかもしれない。しかしそうすると、速報性がなくなってしまう。冊子体の限界だろう。というわけで、CD-ROM版もある。こちらはまだまだ置いている図書館は多くないかもしれないが、あれば格段に使い勝手がいい。


■国立国会図書館「NDL-OPAC」

さらにこれとまったく同じデータをオンライン上のデータベースにしたものが、国立国会図書館

である。2002年10月にこのNDL-OPACは開設した。この「雑誌記事索引」のデータベースを作っているのは国会図書館なのだが、2002年10月まで国会図書館はこのデータベースを公開しておらず、このあとで述べるいくつかの箇所でそれが公開されるという奇妙な形をとっていた。

いずれにせよ、今や国民全体がアクセスできるようになったこのデータベースは、ものすごいデータベースである。日本で発行された膨大な学術雑誌約10,000誌に過去載った論文のすべてのタイトルが一瞬に検索できるというすぐれものである。「北海道の酪農」について調べたいとしよう。この場合、「北海道」と「酪農」という2つのキーワードをかけて検索する。NDL-OPACでは発行された年を指定しなければならないので、ここでは「1996~2000年」の間の論文を検索してみた。すると、82件の論文がヒットした。それぞれの論文が何という雑誌のいつの何巻何号の何ページに載っている、というデータが瞬時に出てくる。

■国立情報学研究所(旧学術情報センター)の各種データベース

 大学や研究所関係者が使えるデータベースに、国立情報学研究所(旧学術情報センター)が提供している種々の文献データベースがある。NDL-OPACの「雑誌記事検索」とまったく同じ内容の「雑誌記事索引データベース」もある。これは、国立情報学研究所(旧学術情報センター)の

というページから入る。同じWebFrontから入る文献データベースには、ほかにもさまざまある。私がよく利用しているのは、

などであり、これらもやはりWebFronから入って検索する。経済学文献索引データベースは、当然のことながら、「雑誌記事索引データベース」と重なる部分が結構あるが、重ならない部分も少なくない。たとえば「北海道」と「酪農」の2つのキーワードをかけて検索すると、「雑誌記事索引データベース」では100件、「経済学文献索引データベース」では60件がヒットし、そのうち重複はわずか14件だった。つまり残りはそれぞれのデータベースにしかなかったということである。いずれのデータベースも完璧ではない。複数のデータベースで検索しないと、大事な情報が抜けてしまう危険があるということだ。   

 2番目の「研究者ディレクトリ」の方は、大学や国公立研究所の研究者一覧だが、これも論文データベースとして使える。というより、論文データベースとして使うのが正しい。このデータベースは、すべて研究者本人の自己申告を元に作られている(私も毎年提出している)。そのため、なかなかデータベースに載りにくい報告書のたぐい(たとえば大学の研究室で私的に発行した報告書など。こういうのが情報源として結構大事になることが多い)なども載っている。私がいつも使っている限りでは、上の「雑誌記事索引データベース」より多くヒットすることが多い。しかし、大学など公的な研究機関以外の人の論文はここには載っていない。文部省にとって「研究者」とはそういう人を指している。NGOの調査マン、在野の研究者などはまったく視野に入っていない。

(※)この「研究者ディレクトリ」は、他の関連データベースと合体して、ReadDとなりました。こちらをご覧ください。

しかし、国立情報学研究所のデータベースの決定的な難点は、大学関係者しか利用できないということだ。国民の税金でせっせと作り上げたデータベースが、なぜ大学関係者(あるいは国立の研究所などの人間)しか利用できないのか理解できない。利用者がそれなりの負担をすれば誰でもが利用できるようにすべきである。せめて、全国各地の公立図書館からアクセスできるとかすべきだろう。

しかし、上にあげたもののうち、3番目の社会学文献索引データベースは、誰でも検索できる。というのも、国立情報学研究所のデータベースサイトと同じものが、

にあるからだ。したがって、こちらを使うほうがよい。

■雑誌記事

 さて、もう一方の「雑誌記事」、つまり通常本屋に売られているような雑誌の記事についての探し方である。これには『週刊朝日』『女性セブン』といった週刊誌から、『世界』、『中央公論』などの月刊誌、さらに、本屋ではあまり見かけないたぐいの雑誌、たとえば『月刊ゴフルマネジメント』とか『月刊酒文化』といったものが含まれる。

■『大宅壮一文庫索引目録』

 こうした雑誌記事、とくによく本屋に置いてあるような雑誌の記事について、もっとも調べやすいのは『大宅壮一文庫索引目録』である。大宅壮一は1900年生まれ、1970年没のジャーナリスト、文筆家。その故人が遺した膨大な書籍や雑誌をもとに、1971年大宅壮一文庫ができ、以降多くのマスコミ人、研究者がその恩恵にあずかってきた。その大宅壮一文庫が作った膨大な索引目録が『大宅壮一文庫索引目録』である。明治~1984年までの目録と、そのあと刊行された1988~1995年の目録の2種類あり、それぞれ、人名編と件名編に分かれている。1988~1995年の人名編でたとえば「美輪明宏」を引くと、114件の記事のタイトルと出典がそこに出ている。「向井千秋」では95件。件名編は、大宅壮一文庫らしく、「天皇」、「心中・自殺」、「賭博」、「スポーツ」などの分類ごとに、索引が編まれている。

■日外アソシエーツの「雑誌・論文情報MAGAZINEPLUS」、「ジャーナルインデックス」、「雑誌記事索引ファイル」

 国立情報学研究所(旧学術情報センター)の「雑誌記事索引」と『大宅壮一文庫索引目録』とを合わせたようなものが、オンラインで検索できるのは、日外アソシエーツいうデータベース専門会社の

である。これは、国会図書館の「雑誌記事検索」と、一般雑誌155冊の1981年以降の記事のタイトルが収録されている(つまり『大宅壮一文庫索引目録』に近い)「ジャーナルインデックス」という2つのデータベースに「学会年報・学術論文集」(35万件)などを加えたものである。このそれぞれは、別のデータベースとしても利用できる。

がそれである。

上で上げた料金はいずれも個人契約の年間料金である。これだけ払えばあとはどれだけ検索しても追加課金はされないのだから、頻繁に使う人にはたいへんお得だと思う。しかし、一方いつも使うわけではない人にはちょっと高すぎる。というわけで、MAGAZINEPLUSには、年会費無料、1件40円というコースがある。論文のタイトル一覧を検索するまでは無料で、その書誌情報(出典など)を引き出したときのみ1件40円かかるというしくみである。また、このサービスは、BIGLOBE、NIFTY、Son-netなど経由でもアクセスできる。

■論文・記事の手に入れ方

 さて、以上のようなやり方で、自分が関心があることについてどんな論文や記事があるのかが分かった。しかし、その論文や記事そのものを手に入れるという作業が残っている。おおざっぱに言うと、学術雑誌は大学図書館や県立図書館、一般雑誌は市町村立図書館にある。そういうところに足を運んで手に入れる、というのが基本だ。しかし、その図書館にはないかもしれない。そんなときは、その図書館の人に相談してみるといい。

 もしあなたが大学の教員・院生・学生だったら、他大学からの複写サービスというものがある(はずだ)。これを知らない学生が多いのだが、こんな便利なものはない。こういうシステムを作り上げた大学図書間の連携は称賛に値する。自分の大学の図書館に見たい雑誌がない場合、図書館で他大学からの複写サービスをお願いする。このとき、書誌情報(著者名、論文・記事名、雑誌名、巻号数、ページ数)があいまいだと受け付けてくれないから、ちゃんとそれを調べてからお願いする。もっとも大学図書館なので、『週刊大衆』や『プレイボーイ』は、(いくら大事な記事だといっても)ない(と思ってあとで触れるWebCatで調べてみたら、1個所だけ、ある研究機関が月刊プレイボーイを所蔵していた。エライ)。

 

■論文そのものも読める巨大データベース Ingenta

 

 雑誌記事、学術論文は、もちろん日本にだけ存在しているのではない。世界のほとんどの論文は、よかれあしかれ、英語で書かれている。英語がまったく読めない人はあきらめるしかない。しかし、英語が少しでも読める人は、英語の雑誌記事や論文に挑戦すべきである。簡単な理由だ。そこには、日本語の記事・論文に載っていない情報が存在するからだ。

 英語の雑誌記事・学術論文を検索するのにベストな、しかも非常に簡単な方法は、

を使うことだ。Ingentaは、ホームページ上で簡単に検索できる。

 Ingentaとは、3万近いの英文雑誌(主に学術雑誌だが、一般雑誌も含まれている)をカバーし、1300万(!)の英語論文のタイトルが収録されている、驚異的な文献検索システムだ。そしてそれだけでなく、その多くには要約がついており、さらに、その論文や記事そのものも簡単に手に入れることができるというシステムである(できないものもあるが、かなり多くのものが手に入れられる)。

 検索だけなら、無料である。そして、登録すれば(登録は無料)、検索した論文・記事を、PDFファイルでダウンロードしたり、FAXで送ってもらうことも可能だ。ただしこれには通常お金がかかる(だいたい一つの論文あたりUS$15~30くらいになる)。しかし、クレジットカードで支払えるので、とても簡単だ。場合によっては、ただでダウンロードできる場合もある。お金がかかるといっても、そのつど支払うのでいいということ(年会費みたいなものは要らない)、いながらにして論文を手に入れることができる、ということを考えると、必ずしもこの値段は高くない。 


□本を探す

■図書館で探す

 さて、本の検索である。こちらは雑誌記事や学術論文の検索よりももう少し簡単だ。

 近くに県立図書館や一般に公開している大学図書館などの大きな図書館がある場合には、とにかく行ってみるというのも悪くない手だ。一般に、市町村立図書館は、読むための図書を多くおいてあり、県立図書館や大学図書館は調べるための図書を多くおいてある。図書館にはたいてい、開架と閉架(書庫)との両方がある。開架においてある本は、眺めていればいいのだが、書庫(閉架)にある図書は、カードやコンピュータで検索するしかない。最近はたいていの場合、コンピュータ化されているが、図書館によっては、一部しかコンピュータ化されていないところもある。この場合は、カードをめくることになる。せっかくその図書館が所蔵しているのに、コンピュータに入っていないばかりに、探しそこねてしまうということもあるので、注意したほうがいい。

 あなたが東京に住んでいるのなら、いちばんのおすすめは都立中央図書館である。ここは、ほとんどの図書が閉架だし、館外貸し出しは一切できないのだが、蔵書が多く、しかも使い勝手がいい。頼んだ本も比較的早く出てくる。

では、検索もできる。

 国会図書館という手もあるが、国会図書館は最後の手段と考えたほうがいい。いや、そう考えてほしい。どこの図書館にでもありそうな本を国会図書館で見ることは、国会図書館にわざわざ貴重な資料を求めてきている人たち(地方からわざわざ出てきている人も多い)の邪魔をすることになりかねない。それに国会図書館の場合、閲覧時間が限られているし、頼んだ本が出てくるまでに時間がかかり、1日かけても結局たいした本が見つからないということがある。それにもし急いでいないのなら、(案外知られていないのだが)国会図書館の本は、あなたの地域の図書館から借りることができる(都内なら、都立中央図書館の本も地域の図書館から借りられる)。大学の学生なら、その大学から借りることができる。地域や大学の図書館で聞くと詳しく教えてくれるはずだ。

 図書館に行ってから探すというやり方のメリットは、開架であれば、探しているうちに、他の重要な資料も見つけることができるということがある。図書館の配列は、だいたい決まっている。そして関連のあるものが近くにある。たとえば「青森」*「農業」でコンピュータ検索して出てこなかった本で、しかし青森の農業に関係したもの(たとえば仮に『十和田市の米作』という本があったとして)が、検索で出てきた『青森県の農業の現状と課題』(これもこんな本があったとして)の隣で見つかる可能性があるのだ。もっとも、反対に、関係があるのに、近くの書架になかった場合(結構ある)、それは検索で見つけるしかない。こちらはコンピュータのほうが得意である。

 ところで、図書館には司書(ライブラリアン)という図書の専門家がいる。利用者から見ると、司書の人もただの事務の人も区別がつかないが、図書館には2通りの人たちがいるのである(たいてい仲が悪かったりする)。司書の重要な仕事のひとつは、利用者の相談に乗るというということである。これは彼/彼女らのれっきとした仕事であり、私たちは、それを躊躇する必要は何もない。そして彼らは図書のプロなのである。もちろん電話でも可だ。電話で「本を探しているのですが」とか「参考係をお願いします」とか言えば、司書の誰かにつながるはずである。

 

■ コピーするときの注意

 

 自分が求めている情報が、雑誌記事、学術論文、あるいは書籍の一部にあった場合、たいていの場合、コピーをすることになる。ここでコピーのしかたについて注意したい。

(1) 書籍の一部のコピーの場合は、必ず奥付を一緒にコピーする。奥付とは、本の最後についている、著者や出版社、発行年月日などが書かれた部分である。ここを一緒にコピーしておけば、あとで、コピー部分を使いたいときに、その出典を正確に書くことができる。人間は忘れやすいし、書類は分散しやすい。たとえ、その出典を書いた紙が他にあったとしても、コピーした現物そのものと一緒になければ、両者のつながりはあとでわからなくなってしまう。奥付を一緒にコピーして、コピーの最後に一緒にしておけば、そうしたことはない。

(2) 雑誌記事、論文のコピーの場合は、必ず、表題の近くに、出典を書いておく。書き方はこうである。

『都市問題』86(7) (1995)

これは、『都市問題』の第86巻第7号(1995年発行)の意味である。これはあとで引用するときに必ず必要になってくる。第○巻というのがなく号数しかない場合もある。この場合は、

『環境社会学研究』4 (1994)

である。

(3) これはこうしなければならないというものではないが、私の場合、すべてのコピーはA4に判形をそろえることにしている。コピー機には縮小・拡大があるから、A4に揃えることは難しいことではない。何よりA4は国際的な標準判形であり(B版などというものは日本以外には存在しないし、現在では企業や役所でもA4が標準となっている)、揃えておくと、整理が楽になる。

 

■大型書店・専門書店・古本屋

 

 大きな書店は図書館と同じ機能を果たしている。東京の八重洲ブックセンター、京都のAVANTIブックセンター、大阪・梅田の旭屋書店など、何十万冊の本を抱えている本屋は、そこいらの図書館よりも使い勝手がある。私もときどき、調べるだけのために本屋に出かけることがある(本屋さん、ごめんなさい)。

 東京や京都・大阪などには、専門書店とでもいうべき本屋が多くある。世界の地図やガイドブックばかり置いている本屋(東京だとマップハウスなど)、航空機関係に強い書店(羽田空港内の書店など)、アジア関係の専門書店(神保町のアジア文庫など)、といった具合に。また、古本屋も、たいていの場合、“色”がある。社会科学関係に強い古本屋だったり、歴史書に強い古本屋だったりする。こうした専門書店や古書店のうち、東京にあるものについては、

  • 『東京ブックマップ』(書籍情報社)

が必携だ。しかし、東京以外の本屋については残念ながら類書がない。逆にいうと、それだけそういうものが東京に集中しているということだ。

 古本屋の中には、カタログ販売しているところも多い。カタログ、というより分厚い冊子を作って、大学の研究者などに配り、注文を取るというやり方である。このカタログ、どのくらい流布しているものか知らないが、たぶん大学関係者以外は案外手に入れにくいものなのかもしれない。もしあなたが大学生・院生だったら、研究室や教員のところにそういうものがあるはずだから見せてもらうといい。もしあなたが大学と関係ない人だったら(もちろんそういう人のほうが多いのだが)、そうした古本屋に電話してカタログを送ってもらうといい。

などがそうしたカタログ販売している代表的な古書店だ。文生堂のページでは古書の検索もできる。カタログを発行している本屋は、この他にも、

の「目録発行店案内」のページにいろいろ出ている(ただし東京の古書店に限られているのが残念)。この日本の古本屋のページには、他にも東京を中心とする全国の古本屋の情報が載っていて有益だ。

 

■政府刊行物センター

 

 さらに、各県庁所在地などにある「政府刊行物センター」というものの存在は知っておいて損はない。これは文字どおり政府刊行物を売っている本屋さんで、主に白書のたぐい、あるいは年鑑や統計のたぐいを売っている。それだけでなく、政策に関する一般の本も数多く取りそろえられている。一般の本屋には置いていない貴重な資料、統計が置いている。また、普通の本屋でも、「政府刊行物コーナー」を設置しているところがある。各地の「政府刊行物センター」の所在、連絡先は、

の中の「政府刊行物の入手方法」のページにある。

 

■図書館に行く前に探す――図書データベース

 

 とにかく図書館や大型書店に行ってみる、というのも手だが、その前に、少し下調べしてみよう。それからだって間に合う。使うのは主にインターネットだ。

現在入手できる膨大な図書のデータベースから検索できる。ただし、すでに絶版になっていたり品切れになっているものも含まれているようだ。ただし、それは悪いことではない。絶版でも、図書館に所蔵されている可能性があるからだ。

  • 紀伊国屋Web http://bookweb.kinokuniya.co.jp/
    和書、洋書ともに、膨大な図書のデータベースから検索できる。同時に注文もできる。
  • 国立情報学研究所(旧学術情報センター)のWebCat http://webcat.nii.ac.jp/
    これは正確に言うと、図書の検索のためのデータベースではなく、どの本がどの大学・研究所にあるかを示すデータベースだ。しかし、図書の検索に使える。上記2つは、一般に入手できる本しか検索できないが、WebCatでは、一般に入手できるか、入手できないかは関係ない。とにかくどこかの大学の図書館にある本や報告書・資料なら、なんでも検索できるのだ。そこがメリットだ。もしあなたが大学の教員・学生だったら、「相互貸借制度」というものによって他大学の図書を借りることができる。もしあなたが大学と関係がなかったら、近くの、一般公開している大学図書館にないか(これはこのWebCatで瞬時にわかる)、あるいは、同じ資料が他の一般に利用できる図書館にないか調べる必要がある。
    • 2002年10月、WebcatPlusというのが始まった。Webcatのデータベースに、「BOOK」データベースを加え、検索能力も向上させたのがWebcatPlusである。
  • NICHIGAI/WEBサービスのBOOKPLUS
    これは「ジャーナルインデックス」、「雑誌記事索引ファイル」と同じく、NICHIGAI/WEBサービスが有料で行っているサービス。「昭和元年より現在までの72年間に出版された161万冊」(!)の情報が入っており、また順次データは更新されている。
  • 国立情報学研究所(旧学術情報センター)のJPM
    これは例によって国立情報学研究所(旧学術情報センター)にtelnetなどで接続できる人のみが利用できるデータベース。国会図書館所蔵の本(つまりは日本で発行された本のほとんど)のデータベースである。

先に挙げた東京都立図書館の検索や各大学図書館のOPAC(検索システム)も同様に使える。

 

■本を中身から調べる 

 

ところで調査のために本を探すというのは案外難しいことである。理由は簡単で、本のタイトルには、その本に書かれている内容のごくごく一部しか表されていないからだ。たとえば、諫早湾の問題も長良川河口堰の問題も三番ケ瀬の問題も全部わかりやすく書かれている本のタイトルが『公共事業の功罪』かもしれないのだ。諫早湾の問題について調べたくて図書館へ行き、「諫早湾」で検索をしても、この本は出てこないのである。

じゃあどうすればいいのか。2つの方向がある。ひとつは、調べたい内容を含んでいるような本のタイトルをあれこれ想像して検索してみることである。「諫早湾」で検索して適当な本が見つからなかった場合、たとえば「公共事業」「環境」などで調べてみる。もっとも「環境」などという言葉で検索したら無数の本がヒットするだろうから、別の言葉を入れて絞り込む必要がある。とにかくそうやって想像力を働かせて検索し、目星をつけ、そのうちのいくつかの本に当たってみるしかない。しかしこれはなかなか効率の悪いやり方であるし、取りこぼしがかなりある可能性が高い。

また、ある特定の著者が書いたもののについて調べたい場合も、このやり方だと不十分である。本、とくに専門的な本には、多くの著者が書いている場合が多く、たいていこういう本ほど情報量が多かったりする。こうした本は普通誰かが「編者」になっていて、本のデータベースには、多くの場合、その編者の名前のみが載っている。本の一部(たとえば1つの章)を書いた人の名前はデータベースに載っていない場合が多い。こうなると上の方法ではお手上げである。

で、もうひとつのやり方の登場である。これは、インターネット書店の検索システムを利用するやり方である。

といったインターネット書店には、本の中身を調べるしくみがある。たとえば
イーエスブックスの「とことん検索」には「本の内容・目次」という項目がある。もっともたいへん残念なことに各章を書いた著者名はここには収められていない。一方、bk1は目次のほかに中身の著者名も収められている。紀伊国屋Webには、「内容情報検索」という項目があるが、これはどんなものが収められているかよくわからない(中身の著者名検索はできない)。ちなみに、項目名「長良川」「諫早湾」、それに著者名「宮内泰介」(私です。笑。)で検索してみたところ、

長良川 イーエスブックス(とことん検索の「本の内容・目次」)   96件
  bk1 71件
  紀伊国屋書店内容情報検索) 138件
  (参考)北海道大学の図書館検索 12件
     
諫早湾 イーエスブックス(とことん検索の「本の内容・目次」) 19件
  bk1 11件
  紀伊国屋書店(内容情報検索) 0件
  (参考)北海道大学の図書館検索 1件
     
宮内泰介   イーエスブックス(とことん検索の「本の内容・目次」) 3件
  bk1 7件
  紀伊国屋書店(内容情報検索) 0件
  紀伊国屋書店(著者名) 3件
  (参考)北海道大学の図書館検索 3件

という結果が出た。

この結果を見ると、どれが絶対優れているということはないので、調べるときには複数のページで調べたほうがいいことがわかる。個人的にはbk1の検索がすぐれている気がした。

こうして調べた本を、今度はそのインターネット書店で買うなり、図書館で再び検索して閲覧するなりするのである。

 

■英語の本の検索

 

英語の本については、検索だけなら、

がたぶんベスト。米国議会図書館オンライン・カタログは、1200万点(!)の書籍、雑誌、コンピュータファイル、音声ファイルなどの総合検索システムである。日本国内の大学に所蔵されている英語の本については、上で触れた

で検索できる。本を買うつもりなら

だ。 
 Amazon.comは、世界最大のインターネット上の本屋。英語の書籍についてはこれで決まりである。他にいくつか同様のインターネット書店があるが、Amazon.comが最大にして最強。とにかく品揃えがすごいし、サービスも非常にいい。

 

■本を買う

 

 本を買う、という行為は、実は難しいものだ。なぜか。欲しい本が近くにないからだ。日本では年間6万点(1996年)の本が発行されるが、そのうち、あなたの近くの本屋に並ぶのはごく一部である。大きな本屋があるなら、そこにまず行ったほうがいい。

 日本では、東販、日販という二大問屋が本の流通のほとんどを握っていて(図書館関係、政府刊行物関係は別)、何をどこの本屋に流すのかは、この問屋が決めるのだ。あなたの近くの本屋には決定権がない。これは、本屋というのが、本を問屋から買って置いているのではなく、問屋から預かって置いており、売れた分の何割かが収入になり、売れなかった本は問屋に返すというシステム(返本制度)を採っていることによる。これは、再販制度、つまり本の値段は出版社が決めるという制度と関係している。それはともかく、本という商品の特殊性とあきらめるべきかどうかわからないが、とにかく本を買うという行為は簡単でない。(このあたりの事情は、永江朗, 1998, 「欲しい本が書店にない!」『季刊 本とコンピュータ』3:22-37などに詳しいので、関心のある人は、参照していただきたい。そしてどういう解決法があるのかいっしょに考えていただきたい)

 探している本があるなら、まず近くにある大きな本屋に電話しよう。のこのこ出かけて行って結局なかったというのは、散歩がてらならいいけれど、忙しいときには時間の無駄だ。その本屋に置いてない場合、「注文しますか」と聞かれるだろう。注文してもいい。しかし、時間がかかる。最低1週間はかかる。ひどいときだと1カ月も2カ月もかかる。別の大きな本屋に電話してみた方がいい。

 どこの本屋にもない場合、待ってもいいなら注文する。待つのは嫌だ、少し高くなっても今すぐ欲しいなら“本の宅配便”だ。

 これらはいずれもWeb上で本の検索ができ、さらに注文もできる。しかし、注文したときに在庫があるかどうかわからないという欠点を持つ。急ぐつもりで注文したのに結局1カ月くらいかかったということもある(私が実際体験した)。やはり電話で確認したほうがいい。 
 これらは全国版だが、他にもたとえば札幌の紀伊国屋書店のように、地方の書店でも“本の宅急便”を受け付けているところがある。

 なお、これらのオンライン書店について、

がそのリストおよび評価を行っていてたいへん参考になる。


 



 

□新聞記事の活用

■新聞記事の落とし穴

 新聞は情報の宝庫である。日本中の約2万人の記者(日本新聞協会加盟の新聞・通信社の記者数。うち、女性は2,000人弱)が、毎日取材し、毎日記事を書いている。その集積が新聞だ。当然ながら貴重な情報である。 
 貴重な情報であるだけに、使う場合には注意が必要だ。

(1) 新聞記事がいつも正しいとは限らない。つまり間違っていることもあるということだ。もちろん一般的な事項については、プロの校正係などがチェックを入れているから、ほとんど間違いがないと考えていいと思うが(大きな新聞社なら、の話)、具体的な事項、専門的な事項については、間違いのある可能性は少なくないと考えておいた方がいい。たとえば事件記事について、新聞記者は通常警察発表を元に記事を書くから、警察発表が間違っていたら、当然記事も間違っているわけである。いずれにせよ、(1)その記事が何を情報源としているか、(2)その情報源はどういう意図でその情報を流しているのか、(3)記事対象と記者の距離はどのくらい近いか、について常に注意を払う必要がある。パプアニューギニアの熱帯林伐採について書かれた記事をよく見ると、シドニーの特派員がシドニーで書いた記事だとわかる、などというのはよくあることだ。現地になんか行っていないのだ。こうした、新聞記事の客観性の問題については、浅野健一『犯罪報道の犯罪』(1984、学陽書房;1987、講談社文庫)『客観報道』(1993、筑摩書房)などを読んでみてほしい。もちろんこのことは、新聞記事だけでなく、他のすべての情報にあてはまる。

(2) 新聞記事は、たとえそれが間違っていないとしても、あくまで記者の目を通してであることに注意しなければならない。これも他のすべての情報について言えることだが、新聞の場合、たいてい署名がないので(毎日新聞は現在署名記事を採用している。欧米ではこれが普通)、一見客観性の装いをまとっている。しかし、その問題の取り上げ方、結論のつけ方、などは、あくまで記事を書いた記者(あるいはそれをチェックしたデスク)の視点が入っている。このこと自体は悪いことでも何でもないし、むしろ下手に客観性を追おうとするより健全だと思う。要は読者の側がそのことをちゃんと認識しておく必要があるということだ。新聞記事は、あくまでその記者の視点で書かれているということである。

 しかし、こうしたことに注意してさえいれば、新聞記事は情報の宝庫として、威力を発揮してくれる。

■切り抜きという伝統技法

 新聞記事の利用というと、少し前まで切り抜きが一般的だった。切り抜いて、それを台紙に貼っていく。しかし、やってみたことのある人なら分かるだろうが、これはたいへんな作業なのである。

 切り抜きの欠点は、(1)切り抜ける新聞は自分や職場が取っている新聞に限られてしまう、(2)作業が大変である、(3)見落としが必ずある、(4)整理、分類が大変である、といったところにある。

 一方切り抜きの利点、とくにこのあとで述べるデータベース利用に比べての利点は、(1)紙面をそのまま切り抜ける。つまりデータベースでは出てこない写真や図表を一緒に切り抜ける(私のように授業で新聞記事を使うような人間にはこれが案外重要で、そのためにいまだに切り抜きをやめられないでいる)。(2)切り抜く分野が特定のものと決まっていれば、切り抜きも効果がある。(3)データベースだとキーワードで検索するしかないが、切り抜きは記事全体を見て、必要な記事を選択することができる。(4)新聞を取っている以上の追加料金がいらない。

 一言でいうと、切り抜きは、「この記事は必要だ」と思ったとき、あるいは、特定の分野や事項について系統的に切り抜いているときには一定程度有効だ。しかし、やはり全体としては、次に述べるデータベース利用に劣ると言わざるをえない。

 もっとも地方新聞や専門新聞などの中には、データベースをもっていない場合がまだ少なくない。この場合、切り抜きに頼るしかいない。また、あとで述べるように、データベースをもっている新聞もすべての記事がデータベース化されているわけではない。とくにたいていの地方版は、データベースの中に入っていない(これは大問題だ)。そういうときには、やはり切り抜きしかないのである。

 それにしても切り抜きは大変な作業である。どうせ、この世の中には、同じような切り抜きをしている人がいるのだから、それを共有できれば楽だと思うのが人情だ。というわけで、“切り抜き情報誌”というものがある。たとえば『ふぇーむでーたぽけっと』(食の情報センター、1986-1995)という切り抜き情報誌は、食・農業・医療・教育をテーマに、各紙から切り抜いた新聞記事を集めたものだった。だった、というのは、この有用な情報誌は、1995年に終刊してしまったからだ。他にもいくつかあった新聞記事切り抜き情報誌も、たいていが終刊してしまった。データベースの普及によって、こうした切り抜き情報誌は役割を終えたのかもしれない。

 また、図書館などによっては、こうした切り抜きを自主的に行っているところがある。たとえば国会図書館では、「新聞切抜資料」という膨大な切り抜き帖群がある。国会図書館内の新聞閲覧室で『国立国会図書館新聞切抜事項名索引』や『国立国会図書館新聞切抜分類表』という索引を調べ、書庫から持ってきてもらうことになる。まことに残念ながら、国会図書館のこの切り抜き作業は1992年でストップした。データベースが整備されてきたのでそれもしかたがないが、データベース整備以前(1980年代前半まで)の切り抜きは、十分に重宝なものである。各地域の図書館でも、独自の切り抜き作業をやっているところは少なくない。たとえば、鹿児島県立図書館では、鹿児島県内の主要新聞の切り抜きをていねいに行っているそれらを数十のファイルに納めて、いつでも見られるようにしている。現在では切り抜いたものを光ファイルにして、データベースとして利用できるようにしている。あるいはこの間訪れた沖縄県の本部村図書館でも、地域の関連の記事をていねいに切り抜きしており、非常に役に立った。こうした図書館の努力は、目立たないものであるが、賞賛に値すると思う。

■ データベースの利用

 切り抜きも悪くないが、やはり総合的にはデータベースが断然すぐれている。もちろん料金が高いとか、すべての新聞がデータベース化されていないとかいったマイナス面もあるが、しかし、それらの問題点を凌駕するほど、新聞データベースはすぐれている。

 第一に、それは多くの新聞を検索することができる。私たちがふだん目にすることのできる新聞はせいぜい3~4紙だ。しかし、世の中にはいろいろな新聞があって、それらは、データベース化さえしていれば(ここが大きな問題ではあるのだが)、いつでも調べることができる。

 第二に、記事データベースは、厖大に蓄積した記事データから、今自分に必要なデータだけを切り取って見せてくれる。蓄積し、分類し、という手間がユーザの側には必要ないのだ。ここはデータベースの最大の強みである。

 第三に、たとえば朝日新聞データベースの場合、各本社版(東京本社版、大阪本社版、名古屋本社版、西日本本社版)の他、18都道府県の地方版が含まれている。私たちが紙面で目にするのは、埼玉県在住者なら東京本社版だけであり、また地方版も埼玉版だけである。大阪本社版に載って東京本社版に載らなかった記事、あるいは京都版にしか載っていない記事は、データベースでしか見られない。あとで触れる縮刷版も東京本社版+東京地方版から構成されているからだ(もっとも朝日新聞は『全地方版』という別の縮刷版を発行している。これが見られる図書館があれば、地方版も網羅できる)。さらに、同じ東京本社版でも、第○版というのがあるのをご存じだろうか。茨城県の人が見ている東京本社版と、東京都区内の人が見ているのは東京本社版は、版が違うのである。この2つはまったく同じ紙面の場合もあるが、微妙に違うときもあり、茨城県への配送を終えたあと重大な事件が起こったりすると、全然違う紙面になる。つまり、日本全国に届けられている朝日新聞には非常に多様なバージョンがあるということだ。縮刷版が東京最終版に限られているのに対して、データベースは、その多様なバージョンの多くが(全部でないところがたいへん残念だが)収録されている。これは他の新聞についても同じだ。

 その中でも北海道新聞の記事データベースはたいへんすぐれている。というのも、北海道新聞は、1994年からすべての地方版をデータベース化しているのである(主要紙面のデータベースは1988年から)。北海道に関する記事なら、かなり小さな記事でこれをフォローできるのである。