【研究プロジェクト】半栽培(半自然)と社会的しくみについての環境社会学的研究


このページは科学研究費基盤研究(B)「半栽培(半自然)と社会的しくみについての環境社会学的研究」(2005~2007)の研究会の概要と記録を伝えるものです。


守られるべき「自然」とはいったいどういうものか、を考えたとき、野生とも栽培とも言えない「半栽培」とでもいうべきものが広がっていることに気がつきます。「半栽培」とは、民族植物学者・中尾佐助が、野生から栽培植物へ移行する間の歴史的概念として提示した概念ですが、私たちは、これを共時的概念として、つまりは、人間と自然との多様な関係(放置的な栽培、野生植物の移植、野生植物への手入れ、いわゆる里山植物、などなど)を表す概念として用いたいと思います。


一方、自然環境にかかわる社会のしくみを考えたとき、共同利用(コモンズ)を軸としつつ、、さまざまなバリエーションや重層性があります。アクセスの権利はどうなっているのか、アクセスする人間はどういう集団をなしているのか、複数の集団(たとえば各世帯、権利団体、住民グループ、行政、など)がかかわっている場合、それぞれの集団がどうかかわりあっているのか、規範やルールはどうなっているのか、といった社会のしくみのバリエーションがそこには存在しています。


そして、実は「半栽培」のバリエーションと「コモンズ」のバリエーションは相互に関係しています。この研究会(科研・基盤研究B「半栽培(半自然)と社会的しくみについての環境社会学的研究」2005~2007年度)では、そのことを、さまざまな事例を通して議論し、自然とのあり方と社会の作り方をトータルに論じようとするものです。



この研究会の成果は、宮内泰介編『半栽培の環境社会学――これからの人と自然』昭和堂(2009)として出版されました。

 


【研究会の記録】


■ シンポジウム 自然再生と地域再生 ― 自然の順応的管理と社会 

10月20日(土)13:00~16:30

北海道大学 人文・社会科学総合教育研究棟W203教室 


基調講演:

  池田啓(兵庫県立コウノトリの郷公園)

  「コウノトリから見えてくる地域の保全」

報告:

  鬼頭秀一(東京大学)「これからの自然環境管理の思想」

  佐藤哲(長野大学)「不確実な科学、不確実な未来と地域環境」

  宮内泰介(北海道大学)「アダプティブ・ガバナンスと市民調査」

パネルディスカッション:司会:関礼子(立教大学)  


■ 第10回研究会(2007.7.14)

場所:関西学院大学K.G.ハブスクエア

報告者:佐藤哲(長野大学)、立澤史郎(北海道大学)

報告1:佐藤哲(長野大学)「生態系サービスと半栽培」

報告2:立澤史郎(北海道大学)「ヤクシカ個体群管理における'原生性'の問題」


■ 第9回研究会(2007.5.19)

場所:関西学院大学(西宮上ケ原キャンパス) 大学院1号館

報告者:関礼子、黒田暁、牧野厚史

報告1:関礼子(立教大学)「半栽培と物語narrative」

報告2:黒田暁(北海道大学)「河川利用と社会組織をつなげる地域資源のあり方-宮城県北上川河口に広がるヨシ原の調査から」

報告3:牧野厚史(琵琶湖博物館)「半栽培という自然との関わり-滋賀県琵琶湖のヨシ帯保全/環境保全への住民参加再考」


■ 第8回研究会(2007.2.11)

研究会の中間総括の会を開きました。

場所:関西学院大学K.G.ハブスクエア(大阪)

報告者:宮内泰介、鬼頭秀一、菅豊、立澤史郎

問題提起1:宮内泰介

問題提起2:鬼頭秀一

問題提起3:菅 豊

問題提起4:立澤史郎


■ 第7回研究会(2006.12.3)

場所:関西学院大学K.G.ハブスクエア(大阪)

報告1:野中健一(総合地球環境学研究所)「クロスズメバチ飼育の広がり」

報告2:菅豊(東京大学)「「奇形」の美学-中国における自然と半/反自然-」


■ 集中討議(2006.10.7)

研究会のこれまでの成果を振り返って論点整理し、議論を煮詰めるための集中討議を行いました。

場所:東京大学東洋文化研究所

参加者:古川彰(関西学院大学)、鬼頭秀一(東京大学)、菅豊(東京大学)、立澤史郎(北海道大学)、宮内泰介(北海道大学)、記録係:富田涼都(東京大学大学院)、オブザーバー:松井久見子(昭和堂)

問題提起1:宮内泰介

問題提起2:鬼頭秀一

問題提起3:菅 豊

問題提起4:立澤史郎


■ 第6回研究会(2006.9.30)

場所:関西学院大学

報告者:柴田昌三(京都大学)、岩松文代(北九州市立大学)

報告1:柴田昌三(京都大学)「竹の野生と人間はどのようにつきあってきたか -今と昔、日本と外国などなど-」

報告2:岩松文代(北九州市立大学)「モウソウチクの栽培と半栽培、その関係性 -北九州合馬地区の竹利用史から-」


■ 第5回研究会(2006.5.27)

場所:東京大学農学部

報告者:

報告1:篠原徹(国立歴史民俗博物館)「水田周辺の植物たち-雑草の親和力ー」

報告2:西澤淳・西澤美穂(東京大学)「保全生態学からみたヨシ原」

報告3:本城正憲「DNAマーカーを手がかりとして探るサクラソウの歴史」


■ 第4回研究会(2006.2.16)

場所:関西学院大学K.G.ハブスクエア(大阪)

報告者:立澤史郎(北海道大学)、鈴木克哉(京都大学霊長類研究所)

報告1:立澤史郎(北海道大学)「ニホンジカは半家畜?~野生と半野生を行き交う資源生物~」

報告2:鈴木克哉(京都大学霊長類研究所)「獣害現場における農家のあいまいな対策実践と被害意識~下北半島の北限ニホンザル問題の事例から~」


■ 第3回研究会(2005.12.12)

場所:関西学院大学K.G.ハブスクエア(大阪)

報告1:新妻昭夫(恵泉女学園大学)「都市生活者と「みどり」」

報告2:塙狼星(同志社大学非常勤)「中部アフリカ熱帯雨林における 焼畑農耕と半栽培」


■ 第2回研究会(2005.9.21)

場所:関西学院大学K.G.ハブスクエア(大阪)

報告1:齋藤暖生(京都大学)「半栽培的な山菜・きのこ―人による植生改変と採取権―」

報告2:田村典江(京都大学)「『岩のり』と栽培」


■ 第1回研究会(2005.7.1)

場所:関西学院大学K.G.ハブスクエア(大阪)

報告:宮内泰介(北海道大学)「半栽培(半自然)と社会的しくみについての研究へ向けて」

コメント:立澤史郎(北海道大学)、菅豊(東京大学)(30分、4MB)


□ 研究会メンバー

【代表】宮内泰介(北海道大学)(環境社会学)

【共同研究者】古川彰(関西学院大学)(村落社会学・環境社会学) / 布谷知夫(琵琶湖博物館)(博物館学、植物生態学) / 牧野厚史(琵琶湖博物館)(環境社会学) / 矢野晋吾(琵琶湖博物館)(村落社会学) / 関礼子(立教大学)(環境社会学) / 菅豊(東京大学)(民俗学) / 立澤史郎(北海道大学)(保全生態学・野生生物管理学) / 赤嶺淳(名古屋市立大学)(環境人類学) / 金菱清(東北学院大学)(環境社会学) / 鬼頭秀一(東京大学) / 新妻昭夫(恵泉女学園大学)(生態学、博物学) / 飯田卓(国立民族学博物館)(生態人類学) / 塙狼星(同志社大学非常勤)(生態人類学) / 鈴木克哉(京都大学霊長類研究所附属ニホンザル野外観察施設)(保全生態学・野生生物管理学) / 斎藤暖生(京都大学・農・大学院) / 田村典江(京都大学・農・大学院) / 中川千草(関西学院大学)(環境社会学) / 平川全機(北海道大学)(環境社会学) / 黒田暁(北海道大学)(環境社会学) / 細川貴志(北海道大学)(生態人類学・環境社会学) / 武中桂(北海道大学)(環境社会学) / 竹内健悟(北海道大学)(保全生態学・環境社会学) / 葛西映吏子(関西学院大学)(環境社会学) / 北村也寸志(兵庫県立西宮今津高等学校)(環境社会学)