ブログ:ドイツ再生可能エネルギー視察の旅

2012年

9月

10日

ドイツ再生可能エネルギー視察の旅(1)

丸山康司(名大)、尾形清一(名大)、本巣芽美(東大)、西城戸誠(法政)、山本信次(岩手大学)とのドイツ再生エネルギー視察の旅。1日目は、世界風力発電協会(WWEA、http://www.wwindea.org)のボンの事務所を訪れました。


風力発電の世界的傾向、その中での政策の役割、"community power"の役割、それにHilchenbachという町の事例をプレゼンしていただき、そのあとディスカッションでした。


社会学ならいい本が出ているよ、と、Conrad Kunze, _Soziologie de Energiewende_という本を紹介されました。ドイツ語かあ。


2012年

9月

11日

ドイツ再生可能エネルギー視察の旅(2)

ドイツ再生エネルギー視察の旅。本日はdeENet(分散型エネルギー技術ネットワーク、カッセル)(http://www.deenet.org/)を訪れ、Dr. Peter Moserおよび研究員の女性たち2人と会う。


deENetが政府からの委託で進めている「100%エネルギー自立地域」の話が中心。「100%」と言っても、単純な需給の話ではなく、いろいろな基準を総合的に評価して「100%エネルギー自立地域」を認定している。


すでに80の地域がこれを達成し、さらに49の地域が「スターター地域」。合わせて国土の28%、人口の19%をカバーするに至った。とくに福島事故のあと、「100%エネルギー自立地域」を目指す地域が急増した、と。


そして話は、昨日の世界風力発電協会と同じく、"community power"の話に。


さらに、研究員の女性2人は若い人たちだったので、若い人の意識について聞いてみた。「原発に賛成の人ももちろんいる。原発についてはまだ論争がある」。ただ世代に限らず、再生可能エネルギーについては多くの国民が総論賛成。ただし、自分の家計との話になると、少し微妙になる、と。


2012年

9月

12日

ドイツ再生可能エネルギー視察の旅(3)

ドイツ再生エネルギー視察の旅。昨日(9月12日)は、フランクフルトから南東に50キロくらいのメンヒベルク(Moencheberg)で活動するウンターマイン(Untermain)エネルギー協同組合を訪問。


協同組合(ドイツ語でgenossenschaft)の中心人物5人ほどが私たちを大歓迎してくれ、あちこち連れて行ってくれた。


この協同組合、この地区で環境について考えるサロン的な「クラブ」(ミルテンベルク・エネルギーフォーラム、2007年設立)を前身とし、再生可能エネルギー事業を進めるために2010年設立。現在組合員92名。


この「協同組合」という組織形態を選んだことの意義をみなさん強調。曰く「参加や投資がしやすい」「プロジェクトを社会的に受容しやすい」「地元に利益が落ちやすい」。


ちなみにエネルギー協同組合はドイツ中で急増中で、2011年現在で586あるという。


ウンターマイン・エネルギー協同組合は、現在地元の銀行と共同で投資して太陽光発電を4箇所に設置。そのうちの一つを見せていただいた。2.3MWのメガソーラー。農家の地とを20年間の契約で借地(7ha)。600世帯分の電気に当たる。


しくみがもう一つ分からないところがあるのだが、協同組合の組合員は、プロジェクトごとに投資をすることができる。見せてもらったメガソーラーの場合、17人の組合員が投資に参加。


ウンターマイン・エネルギー協同組合は、現在太陽光発電だけだが、風力発電も計画中。そこで隣の地域でやはり協同組合で風力発電を行っているところを訪問。


元米軍の敷地が地元自治体に返され、グリーン産業を育成する場所にしていされたところにその風車は立てられていた。この風車、地元銀行が協同組合を設立する形で事業が始まった。「なぜ銀行が協同組合を?」「それは偶然。個人的なイニシアティブで始まったのさ」。


オーデンバルト・エネルギー協同組合の代表クリスティアン・ブロイニッヒさん。オーデンバルト民衆銀行の役員でもある彼がイニシアティブをとり、風力発電のための協同組合を設置することを銀行で提言して、この風車ができた。


最後に訪れたのは、近くの村で行われているバイオガス・プラント。地元農家が2006年に始めた事業。「食料生産だけに頼る農業から、エネルギー生産を含めた事業の方が安定する」、と始めたという。原料の半分はトウモロコシ、残りは他の作物、草、家畜糞など)。


現在電気と熱の両方を地元に供給。村全体がここの熱で暖房をしている(温水を村までパイプで運んでいる。夏は地元の製材会社がチップを乾かす熱に利用)。


ウンターマイン・エネルギー協同組合の5人衆は、一日中僕らにつき合ってくれた。一人は電気技術者、一人は建築家、一人は会計、とそれぞれ専門をもっている。隣の協同組合の風車でも、バイオガス・プラントでも、本人たちが熱心に質問。僕らとの議論も楽しんでくれた、たいへん気持ちのよい人たちであった。


2012年

9月

13日

ドイツ再生可能エネルギー視察の旅(4)

ドイツ再生可能エネルギー視察の旅。本日(9月13日)昼に、フライブルク到着。言わずとしれた「環境都市」。


BUNDフライブルグ(BUNDはドイツの環境保護団体)のアクセル・マイヤーさん(1955年生まれ)を訪れる。環境保護団体としての風力発電へのスタンスを聞きに来たが、「私たちは幅広い問題を扱っていて、私の仕事の中で風力発電はそのごく一部」。というわけで、BUNDフライブルグの活動全体の話を聞く。お話を聞いた部屋には反原発のポスターやステッカーがいっぱい。


マイヤーさん、「40年間環境運動をやってきた。最初の20年間はボランティアで、あとの20年間はここで働いている」。BUNDは40年前に設立され、それまでの環境団体が自然保護中心だったのに対し、公害問題や原発など、政治的なことをBUNDはやり始めた。「BUNDの40年間の運動の最初の20年は公害や開発反対が中心で、あとの20年はよりよい生活への取り組みが中心になった」。BUNDフライブルグはフライブルク周辺の100kmをカバーしていて、会員は17,000人。収入の90%は会員からの会費。


「私たちの団体は、自然保護と開発反対運動の両方の側面をもっている。風力発電について言えば、私個人としては大きく開けた景観(つまり風電がない景観)が好きだ。しかし、代替エネルギーはもちろん必要で、妥協が必要になってくる。そこで風車を立ててよいエリアと立ててはいけないエリアを分けるべきだろう。ドイツには洋上風力と陸上風力があるが、ドイツの海は遠浅なので洋上風力は陸上風力に比べて問題は小さいのではないか」。


BUNDフライブルグにはたくさんの地域グループがある。各地域グループは自然観察会などの活動を熱心に行っている。ある村のグループは、昨年の福島事故のあと毎週日曜日に反原発のデモを行ったという。


中央政府や地方政府との関係を聞くと、「政府も変わってきた。保守党も変わってきている。一緒にするときは一緒に行い、反対するときは反対する」、とマイヤーさん。それでも「フライブルクはグリーン・シティと言われていますが、まだまだ達成できていないことが多いのです」と。



BUNDフライブルグ→http://vorort.bund.net/suedlicher-oberrhein/ (ちなみにgoogle翻訳のドイツ語→英語を使うと、ドイツ語のページもほぼ完璧に英訳され、簡単に読めます)


2012年

9月

14日

ドイツ再生可能エネルギー視察の旅(5)

昨日9月14日は、エアハルト・シュルツ(Erhard Schulz)さんの案内で、フライブルクのあちこちをめぐった(本日のメンバーは、丸山康司(名大)、尾形清一(名大)、本巣芽美(東大)、西城戸誠(法政)、山本信次(岩手大学)、青木聡子(名大)、古屋将太(ISEP)、宮内)。


エアハルトさんは、1970年代のヴィール村の原発反対運動にかかわった闘士で(ヴィールの原発計画はストップ)、現在はイノベーション・アカデミー(http://www.innovation-academy.de/)という環境にかかわるエクスカーションやセミナーなどを行う非営利団体をやっている。私たちもそこに委託する形でツアーを組んでもらった。


最初に訪れたのはフライブルク市のグリーンシティ局のスザンヌ・ヴィエンネケさん。旧市街の旧い市庁舎の中でお話をうかがった。フライブルクが環境都市として、再生可能エネルギー、環境関係の産業支援、サステナブルな交通(市電、自転車)などに取り組んでいる様子を全般的にうかがう。産業支援については、フライブクルク・グリーンシティ・クラスターオフォスおよびというものを設けている。スザンヌさんも70年代の反原発運動がフライブルクでの取り組みの一つの源流だ、と。


次に訪れたのは、GLS銀行(http://www.gls.de/)のフライブルク支店。この銀行はシュタイナー学校の流れでできていて、環境や社会系の事業に融資する。現在13,000人の預金者がいる。利子などは他の銀行とだいたい同じ。預金者向けの広報誌には必ずどこにどれだけ融資したかが書かれていて、「この透明性が大事です」と支店長のアネット・ボーランドさん。「融資先が環境保全的かどうかなどはどう判断するのですか?」という質問には、「それはいい質問です。環境保護団体などの専門家にそこは調べてもらいます。たとえばバイオガス・エネルギーでも、食料を使ったものについては、融資をしていません。そのあたりは議論をすることが大事です」。GLS銀行はこうした通常の融資の他に、自ら太陽光発電のプロジェクトを起こし、それについて“リスクはあるけれども通常の預金よりもハイリターン”というものも用意している。「ドイツは現在経済状況が良くなく、人々は将来への不安をもっている。そういう中で再生可能エネルギーは将来性があるということで投資したい人は多い」。


3番目に訪れたのはエコシュトローム社(http://www.oekostrom-freiburg.de/)。風力発電30基を手がける会社。社長のマルコウスキーさんはもともと銀行に勤めていたが、1986年小水力発電を買うところ個からこの事業が始まり、「趣味が高じてこんな会社を経営することになった」。現在、多くの自治体、市民、団体、会社と連係して(そのリストは http://bit.ly/R7Ryap )、数多くの風力発電や太陽光発電の開発事業を手がけている。銀行から借りるのと、地元から出資を募るのとの両方を組み合わせて風車を作っている。(あとでエコシュトローム社が手がけた風車の一つを訪れた。フライブルク近郊の山の上。1.8MWの大きな風車(Enercon製)だった)


それにしても、フライブルクの町は、郊外も含めて、現在これでもかというくらいに建物・住宅の上に太陽光パネルを張りまくっている。若干景観上の問題がありそうな気もするが、数十年もすれば、これがフライブルクの景観として落ち着くだろうか。


(以上の記述、急いでまとめたものなので、若干の事実誤認などがあるかもしれません)


2012年

9月

15日

ドイツ再生可能エネルギー視察の旅(6)

一昨日の9月15日は、エネルギー自給の村として注目を浴びているフライアムト村、そして、原発反対運動の先駆けとして有名なヴァイスヴァイル村を訪問した。


フライアムト村は環境都市フライブルクから北に車で20分のところに位置し、5つの集落からなる。このには現在、5つの風車、2つのバイオガス・プラント、200の太陽光発電、4つの小水力発電がある。外国からを含む観光客も多く、農家民宿も盛ん。人口4,000人の村だが、専業農家は非常に少なく、多くは近隣の都市フライブルクに通勤している。


まずバイオガス・プラントを手がける農家を見学。この農家は2003年からバイオガスによる発電と熱エネルギー供給を始めた。トウモロコシ1/4と牧草1/4に家畜の糞1/2を混ぜる。家畜の糞は近隣の農家から入れ、バイオガスの結果生みだされた堆肥を逆に農家に供給する。現在熱エネルギーは、断熱を施したパイプを使って近隣の学校と14世帯の家に供給。電気は現在0.18ユーロ/kwhで売っている。10年前に70万ユーロ(7,000万円)投資し、さらに3年前に25万ユーロ(2,500万円)追加投資してこのバイオガス・プラントを始めたという。


エネルギー自給に熱心な酪農家のシュナイダーさんの家も訪れた。15頭の乳牛を飼っている農家だが、家に大きなウッドチップ・ストーブを持っている。一冬で100立方mのウッドチップを利用しているという。5年前には太陽光パネルも設置、また、牛乳の冷却排熱を再利用して温水を作作ることも行っている。


このシュナイダーさんの広大な土地の一部に風力発電が立っている。この風車は、村の住民たちを含む142人の投資者と2つの銀行からの融資によって立った。村の住民たちが風車設立のためのクラブを設置して3年間事前調査したが、資金について困難があったため、エコシュトローム社のマルコウスキーさん(私たちが9月14日に訪れた会社)に相談し、そのオーガナイズのもとで建設された。2001年に発電を開始。


エネルギー自給の村フライアムト村のあとに訪れたのは、ヴァイスヴァイル(Weisweil)村。1970年代のヴィール原発建設計画反対運動の中心の村である。


「原発お断り」の旗が掲げられたタウンホールで、この村の運動の軌跡についてプレゼンを受けた。当時の警察と対峙する写真、トラクターデモの写真などが示された。運動の過程では、「森の学校」と称する自主講座が開かれ、そこで住民たちは原発のことのみならず自然についても学んだ。


現在住民の40%の家に太陽光パネルが設置されている。「私たちの反対運動は、単に反対だけでなく、代替エネルギーについても考えてきたことが勝利の要因になっている」。「私たちの運動では、女性の力が重要でした」。


原発反対運動と再生可能エネルギーがどこでも自然につながっている。


(以上の記述、急いでまとめたものなので、若干の事実誤認などがあるかもしれません)


フライアムト村については、以下を参照――

遠州尋美「市民が主役の再生可能エネルギー普及:シェーナウEWS とフライアムト村」  

“In Germany, ruddy-cheeked farmers achieve (green) energy independence”, Christian Science Monitor, August 21, 2008

“Freiamt’s green adventure”, Sunday Herald, December 7, 2008 

“Green Energy”, Clean India Journal, Feb. 2009


2012年

9月

19日

ドイツ再生可能エネルギー視察の旅(7)

ベルリンの一角に事務所を構える協同組合「ベルリン市民エネルギー(Bürger Energie Berlin)」を訪問した。


この協同組合、実に野心的でおもしろく、ドイツ国内でも注目されている。訪れた僕らを歓迎してくれたのは、代表人物ペーター・マスロッホさんとその仲間3名。みんなボランティアだ。事務所は旧東ベルリン地区にあり、もともと化学工場があったところが、社会的企業などさまざまな団体が集まる集合住宅になっている。


マスロッホさん、「「発電を市民が」から「送電を市民が」の段階に入っている。シェーナウ村がその先駆だった。私たちの協同組合は2011年12月に設立。目的は、ベルリンの配電網の営業許可を勝ち取ること」


現在ベルリンの配電網を運営しているは、スウェーデンの大手電力会社ヴァッテンファル。しかしその契約は来年2014年に切れる。その先は営業許可をめぐる入札によって決まる。


「入札は政治的に決まる。私たちの協同組合は現在次の契約を勝ち取るためにお金を集めている」。集めたお金はGLS銀行(社会的企業への融資をする銀行)の子会社であるGLS信託に預け、営業許可を勝ち取るまではそれに手を付けない形をとっている。もし勝ち取れなければそれらのお金は返還される。


同時に州議会への働きかけなど、さまざまな政治的な動きをするつもりだ。


「私たちとは別に「ベルリン・エネルギー・テーブル」という会があり、そこはベルリンの配電網の営業許可をベルリン州が買い取ることを求めている。私たちとしては、第1の目標は私たち自身が配電網を買い取ること。次善の策としてベルリン州が買い取ることだと考えている。ベルリン州が買い取るための住民投票も考えている。ベルリン州が買い取る場合は、私たちとしてもその一部を出し、その経営に参加したいと考えている」


ベルリン市民エネルギーの目的は再生可能エネルギーそのものというより、経済の民主主義化だ。マスロッホさん、「私たちの活動の目的は3つある。一つは経済を地域に戻すこと、二つ目は民主主義。だから私たちのグループは、出した金額にかかわらず1人1票である協同組合という形を選んだ。最後にすべててのイッシューを政治化すること(来年総選挙であり、送電線の民主主義化について争点にしたい)。私たちの試みがもし失敗しても、これはパイオニアとして他地域に波及するはずだ」。


本気である。


————————-

ベルリン市民エネルギー(Bürger Energie Berlin):

http://www.buerger-energie-berlin.de/

グーグル翻訳による英語: http://bit.ly/Pr08TA


ベルリン市民エネルギーをとりあげたページ:http://midori1kwh.de/2012/07/16/2114(日本語)

http://bit.ly/S7BoDv (英語)

http://bit.ly/QmjpV3 (英語)


(以上の記述、急いでまとめたものなので、若干の事実誤認などがあるかもしれません)